駅前食堂にて・・・（ツーリング番外編）

ちょっとどころか、かなり後悔していた。
安さに釣られ、ツーリング2日目の宿は、ＪＲ小出駅前の小さなビジネスホテルに泊まった。

何たって大浴場付き、ツインのシングルユースで5,000円だ。
前泊が桧枝岐の旅館で贅沢したのだから、これはいたし方ない。

しかし部屋は暑く、空調頼んでも入れてくれず、大浴場の扇風機は故障で、賄いであった夕食を
頼んでも、予約時に言われていないからと断られた・・・
イヤ違う、こんな些細なことで後悔しているのではない、ナニカガイル・・・？

そこはかなり歴史のあるホテルらしく、明治時代のような写真がフロアの真ん中に飾ってあり、
よくわからない派手な着物が、まるで「羊たちの沈黙」のそれのように壁に広げ張られていた。

それを見た時、霊感などほとんどないはずの僕の背筋が寒くなった。
館内は暗く、電灯が蛍光灯で寒々しいせいかもしれない・・・
宿泊客は僕一人で、異常に静かなせいかもしれない・・・

気を取り直し、外へ夕食に出掛けた。
しかしＪＲ小出駅の周りは、本当に何もないのだ。

唯一、一軒だけ、煌々と電気に照らされて闇に浮かび上がる食堂があった。
選択の余地はなかった。

暖簾をくぐると、客は誰もおらず、店のオヤジと助手のようなオッチャンがいて、
待ちかねたように注文を取りにきた。

メニューは刺身からフライもの、そばまで実にいろいろある。
よく言えば所謂駅前食堂らしいが、悪く言えば統一性がなく何がウリなのかワカラナイ。

その中で「大好評！味噌カツ丼」という張り紙が目に入った。
名古屋生まれの僕は、思わず味噌カツ丼一つ！と注文してしまった。

ほどなくして味噌カツ丼が
出てきた。

「おっ、これは・・・」
味噌の色が黒に近い。
見た目すごい旨そうである。

早速がっつく。
期待通りの甘辛い味が
口の中に広がった。

これは旨いでないの！
思わずほくそ笑む。

味噌は田楽風で香ばしい。
肉も厚めで歯応えあり。
ゴハンは何といっても
魚沼産だ。

あっという間に平らげた。

お勘定を払いつつ、店の
オッチャンに言った。

「僕、名古屋出身なんスけど、
味噌カツ丼旨かったです」

「あっ、ありがとうございます」
嬉しそうなオッチャンの顔が
印象的だった。

旨い味噌カツ丼のおかげで、宿での恐怖感は薄らいだ。（現金なヤツ・・・）
しかしすぐに帰る気にはならず、小出駅の周りをブラついた。

今やこのあたりは新幹線の方がメインのようで、在来線の小出駅は寂しい限りだ。
ホームに人影はなく、時刻表を見ても1時間に一本程度、特に只見線は皆無に等しい。

そもそも駅は繁華街から外れた場所にあり、昔はそれでも賑わっていたんだろうけど、
現在は見る影もなく周囲はひっそりと静まりかえっている。

考えてみれば、恐らくもう2度とこの場所には来ないだろうし、この駅自体いつまで
あるのかわからない。
そう思うと、一期一会ではないが、人や場所にかかわらず一つ一つの出会いは
大切にしたいものだ。どんな形であろうと・・・

さて、宿に帰った僕は、清志郎の曲をipodで聴きながらそそくさと寝る準備に入った。
僕の特技は、どんな環境であろうと数分以内で寝れることだ。
寝苦しい夜なんて、ほとんど経験したことがない。
電車の中でも立って寝れるほどだ（笑）

電気を消した時、一瞬ヤバイ感じがしたが、すぐに熟睡、気持ちの良い朝を
迎えたのでした。チャンチャン

Comments

[投稿情報: ブンカッキ−]

いつ“貞子”が出てくるのかとハラハラしながら
読んだら､“チャンチャン”だった(笑)
しかし､いくら歴史があるからといって､そんな客軽視で
よく潰れないなぁ。この厳しい時代に！(-_-ﾒ)

[投稿情報: kerokerobouzu]

ブンカッキーさん、どうもです。

まあ多分何かいたのでしょうね（笑）
ただ自分は結構強いモノ（所謂守護霊ですかね）に守られているらしく、
結構大丈夫なようです。

この宿さらに飲み物を売ってなくて（販売機もナシ）、寝る前に喉が渇いたので
仕方なく外に買いに行こうとすると、玄関など全て鍵がかかっていて出れず。
裏の非常口を探し出し事なきを得ましたが、あやうく監禁されかかりました（苦笑）